『襲名』がある歌舞伎俳優のWebサイトのドメインを考察する

歌舞伎が好きで、よく観劇に行きます。敷居が高そうな趣味と見られがちなのですが、単純に歌舞伎俳優の格好よさや身体能力の高さ、女性よりも美しいのではと思う女方の色香、人間国宝の芝居を堪能するのが好きで、せっせと劇場へ足を運んでいます。

現代では歌舞伎俳優がWebサイトをお持ちのことも多いです。ふとしたことから歌舞伎俳優のサイトのドメインが気になり、調べることにしました。




きっかけ

長らく病気療養されていた中村福助丈が2018年の9月に復帰されます。その復帰メッセージを福助丈のサイトで見ていて、ドメインが目に入りました。

※この記事では歌舞伎俳優の敬称に丈を使用します。

ドメインはWeb上の住所のようなもので、上記の福助丈のサイトなら nakamura-fukusuke.com がそれにあたります。

病気療養の直前、中村福助丈は中村歌右衛門を襲名することが決まり、福助の名跡はご子息の児太郎丈に譲られることとなっていました。
現在襲名にまつわる行事はストップしていますが、福助丈の健康状態次第で再び動き出すかもしれません。そうなった場合に今後のドメイン管理はどうするのだろう、と疑問に思いました。

名前を受け継いでいくこと

歌舞伎俳優の名前は代々受け継がれていて、古いものでは江戸時代から存在しています。
この継がれていく名前のことを名跡といい、歌舞伎に限らず落語などの芸能や、老舗の商売の世界にもあるそう。名跡を継ぐことを襲名といい、最近の歌舞伎界では2018年の松本白鸚・松本幸四郎・市川染五郎の高麗屋三代襲名が有名です。
この場合は親から子へ名跡を譲っていますが、甥などの親族に名前が渡る場合もあります。

わたしが気になったのは、名跡そのものをドメインにしていたら、次代の名跡を継ぐ人がサイトを持とうとするときに支障がでてくるのではないか?ということ。親から子へ名跡を継ぐ場合はドメインを譲りわたすことも簡単でしょうが、そうではない場合は譲渡手続きがややこしそうです。

さらに、しばらく名跡が継がれず何年も空席のまま、ということもよくあります。
長期間その名跡が不在の間、ドメインの管理が有耶無耶になり、最悪の場合放棄されてしまう…という可能性もゼロではありません。
なお、一度取得して使われた実績のあるドメインは検索エンジンにも信頼されているので、第三者が放棄されたドメインを取得し、悪用される可能性もあります。

では歌舞伎俳優のドメインはどうしたらいいのか? と考え始めたら気になって仕方なくなってしまったので、現代の俳優のサイトのドメインを調査し、どのようなドメインがよいのか考えてみます!




34サイトのドメインを調査

2018年7月の前後で出演歴のある歌舞伎俳優のお名前をGoogleで検索し、34サイトのドメインを調査しました。
(検索の母数はしっかりと数えていませんが、おそらく50名〜60名程度は検索したはず)

サイトを持っている俳優と、持たない俳優の違い

調査していて、ブログの更新・instagramやtwitterなどのSNSをされている歌舞伎俳優は多いのですが、公式サイトを持っている俳優は限られているように思いました。
というのも、サイトを運営しているのが後援会(俳優の活動を支える団体)や所属事務所であることが多いので、

  • 歌舞伎界を牽引する力を持ち、ファンが多い(サイトを開設して需要のある)俳優である
  • 歌舞伎の家に生まれた御曹司で一定数のファンがついており、これからの活躍が期待されている俳優である

…といった、ある程度しっかりしたバックボーンが必要そうでした。

その点、SNSはアプリがあればアカウント開設・運用できるので、手軽にファンと交流できます。なかでもInstagramをされている歌舞伎俳優は多く、市川中車(香川照之)丈のご子息・團子丈もアカウントをお持ちです。

調査結果

現在の名跡をドメインにしている

結論からいうと、34サイト中21サイトが現在の名跡でドメインをとっており、もっとも高い割合となりました。
なかでも、 名跡の名前部分のみ>フルネーム(姓・名の並び)>フルネーム(名・姓の並び) と割合が分かれています。

名跡の名前部分のみ…10サイト

サイト名 松本幸四郎 – オフィシャルサイト
ドメイン https://koshiro.jp/

2018年1月に第十代松本幸四郎を襲名された、幸四郎丈のサイト。覚えやすさを考慮しているのか、名前だけのあっさりとしたドメインです。
松本幸四郎の名跡の歴史を感じる重厚感のあるデザインで、かなりしっかり作り込まれたサイトです。運営は所属事務所のよう。幸四郎丈と同時に八代目市川染五郎を襲名されたご子息のページもあります。

ちなみに幸四郎丈が染五郎だった時代のサイトも、ドメインとともに残っています。

サイト名 市川染五郎オフィシャルサイト「そめいろ」
ドメイン http://www.somegoro.jp/

こちらも名前だけの短いドメイン。染五郎丈が本格的に歌舞伎の世界で活躍し始めたときに、こちらのドメインを染五郎丈に渡すのかな?と想像。とはいえ染五郎丈は2018年時点ではまだ中学生なので、10年後などのちょっと先の話になりそうです。

なお、2016年に現在の名跡を襲名された中村雀右衛門丈も、幸四郎丈と同じように襲名以前のサイトが残っています。
2018年現在では、以前の名跡のドメインも所持しておくことが主流のようです。

フルネーム(姓・名のドメイン)…7サイト

サイト名 市川海老蔵 オフィシャルホームページ
ドメイン http://www.ichikawaebizo.com/

テレビなどのメディアでも有名な市川海老蔵丈のサイト。姓・名のわかりやすいドメインです。
海老蔵丈の美麗な写真が印象に残るサイトですが、現在では情報が更新されていません。このサイトとは別に、彼が属する成田屋一門のサイトは頻繁に更新されているので、現在では成田屋のサイトが実質の海老蔵丈公式サイトと言えそうです。

サイト名 成田屋 市川團十郎・市川海老蔵 公式Webサイト
ドメイン http://www.naritaya.jp/

成田屋一門のサイトはこちら。後ほど解説しますが、屋号を使用したドメインになっています。

フルネーム(名・姓の並び)…4サイト

サイト名 中村隼人オフィシャルサイト
ドメイン http://hayato-nakamura.com/

ワンピース歌舞伎でサンジを演じたことでも知られている、花形俳優の中村隼人丈のサイト。名・姓の並びで、間にハイフンがあるドメインです。

彼は歌舞伎俳優中村錦之助丈のご長男なのですが、歌舞伎俳優の家に生まれた御曹司は比較的サイトを持っていることが多いように感じました。(冒頭で書いたように、サイトを持ちやすいバックグラウンドを持っているからと推測)
ちなみに父である中村錦之助丈もサイトをお持ちで、フルネーム(姓・名の並び)でドメインをとっていらっしゃいます。

親子まとめて現在の名跡でドメインを取得している…2サイト

親子ともども同じように俳優として活躍していることが多い歌舞伎界では、親子でサイトを持っていることも珍しくありません。
その関係で、父・子の現在の名跡でドメインをとっているサイトも見受けられました。

サイト名 歌舞伎役者 中村歌六 米吉 |オフィシャルサイト
ドメイン http://ka6-yone-ryu.com/

中村歌六丈と米吉丈の親子のサイト。米吉丈はバラエティ番組などの出演も多いのでご存知のかたもいらっしゃるかもしれません。とても可愛らしい女方です。(ぜひギャラリーのお写真もご覧ください…!
ドメインは歌六丈と米吉丈の名跡をひねって表現しているのだと思いますが、末尾のryuの意味がわからず… 「流」でしょうか。

親子揃って次の名跡を襲名される可能性もありますが、その際このサイトはどうされるのか、気になるところ。なお、親子の名前をドメインとして使っているのは、市川中車(香川照之)丈とご子息團子丈のサイトも同様です。

サイト名 中車と團子の会
ドメイン http://chusha-danko.com/

屋号でドメインを取得している…7サイト

歌舞伎俳優はどなたでも、名跡とは別に屋号という名前をもっています。
歌舞伎の上演中に、芝居の見せ場で「◯◯屋!」という掛け声(大向こう)がかかるのをご存知でしょうか? この◯◯屋が屋号です。江戸時代の歌舞伎俳優は苗字を名乗ることを許されなかったため、代わりに使用していたものだとか。
さきほど海老蔵丈のサイトであげた成田屋のサイトのように、屋号をドメインにして一門で管理しているサイトも多く見受けられました。

サイト名 音羽屋 尾上菊五郎/菊之助 オフィシャルサイト
ドメイン http://otowaya.ne.jp/

人間国宝の尾上菊五郎丈と、ご子息菊之助丈を中心とした音羽屋(おとわや)一門のサイト。屋号のみの超シンプルなドメインです。歌舞伎俳優のサイトで .ne.jp というドメインも珍しいかも。
サイト内には尾上菊五郎丈、菊之助丈を中心に尾上右近丈ほか一門の俳優をあまねく紹介しているので、音羽屋というドメインはぴったり。なお、右近丈は個別にサイトもお持ちです。

余談ですが、こちらの音羽屋のサイトの構成が上方歌舞伎の俳優・片岡孝太郎丈のサイトと似ているのが若干気になるところ。同じ制作会社が作られたのかな?

サイト名 坂東巳之助公式サイト
ドメイン http://yamatoya-m.com/

ワンピース歌舞伎やNARUTO歌舞伎でご活躍の花形俳優、坂東巳之助丈のサイト。巳之助丈の屋号は大和屋のため、その文字列をドメインに使っているようです。
末尾の -m が気になるところですが、「巳之助」の頭文字と考えるのが良さそう。次に名跡を継ぐとしたら父の名跡 坂東三津五郎になる可能性が高いので、そのときも使えそうなドメインです。

そのほかのルールでドメインを取得している…3サイト

今まであげた例には当てはまらない、変則的なドメインもありました。

サイト名 歌舞伎役者 播磨屋 中村又五郎/中村歌昇/中村種之助|燿の会オフィシャルサイト
ドメイン http://www.n-kasho.com/

中村又五郎丈とご子息の歌昇丈、種之助丈のサイト。
http://www.n-kasho.com/というドメインだけ見ると歌昇丈おひとりだけのサイトに見えますが、実際は親子2代のサイトです。さらにいうと、サイト名が燿の会(ようのかい)というお三方の後援会の名前で、ドメインとサイト名を見ると整合性がなくちょっと違和感があります。

インターネットアーカイブから過去のサイトの様子を確認すると、こちらのサイトは2007年に中村歌昇丈の個人サイトとして発足したそう。
2007年当時のhttp://www.n-kasho.com/
ただし当時の歌昇丈は2011年に又五郎という名跡を襲名し、同時にご子息へ歌昇の名跡を譲られました。その襲名の時期に合わせて、サイトを親子2代のものへと変えたようです。

サイト名 坂東彌十郎 坂東新悟 公式サイト
ドメイン http://www.yagonokai.com/

歌舞伎界の名バイプレーヤー坂東彌十郎丈と、ご子息の坂東新悟丈を中心とした大和屋のサイトです。
後援会の運営で、後援会の名前がそのままドメインに使われているというちょっと珍しいパターン。楽屋写真などの更新も頻繁にあり、後援会がしっかりとサイトを運営されている様子がうかがえます。

サイト名 株式会社ファーンウッド
ドメイン http://www.fernwood.co.jp/

中村勘九郎丈、七之助丈を中心とした中村屋一門が所属している事務所のサイト。(歌舞伎俳優は基本的に興行元である松竹株式会社に所属していますが、個人の事務所もお持ちの場合が多いそうです)
坂東彌十郎丈・新悟丈や中村又五郎丈・歌六丈・種之助丈のように後援会が中心で運営されているパターンはあるものの、事務所のドメインでサイトがあるのは珍しいようにも思います。

ドメイン名、これがよいのでは

長々書いてきましたが… 調査する中で思い至った「これがいいんじゃないか」というドメインについて結論を書きます。

現在の名跡+代数のドメイン

サイト名 歌舞伎役者 四代目尾上松緑・藤間流家元 六世藤間勘右衞門の公式HP
ドメイン http://shouroku-4th.com/

荒事を得意とする尾上松緑丈のサイト。
ドメインが名跡+何代めかということを表していて、前や次代の人と被らず、新たな名跡を襲名してもコンテンツを残しておきやすいというメリットがあります。

名跡+代数を使用しているユニークなドメインのため、新たな名跡を襲名したあとや故人となってからなど、管理が難しくなった場合は閉鎖してドメインを放棄することも容易です。

ただし、記事のはじめに書いたように、放棄したドメインを第三者が取得して悪用するリスクもあります。
新たな名跡でドメインを取得している場合は、放棄する予定のドメインから新しいドメインにリダイレクトをかけ、ページランクを移行してから放棄する方がよさそうです。

屋号のドメイン

名跡は変わりますが、屋号はめったに変わりません。音羽屋や成田屋のように、一門を引っ張る大きな役者の紹介を中心としつつ、一門全員の情報を載せるのも一手と思います。

ただし、屋号が同じであっても規模が大きく、サイトを共有することが現実的ではない場合もあります。
例えば中村芝翫丈を中心とした成駒屋(なりこまや)と、中村鴈治郎丈を中心とした成駒家(なりこまや・やの漢字が異なる)は系図を見ると遠縁の親戚にあたるようですが、現在ではそれぞれ異なった特徴を持つ一門です。
屋号が同じだから…という理由だけでひとつのサイトにまとめて掲載するのは厳しいはず(実際、www.narikomaya.jpでドメインを取得して運用しているのは中村芝翫丈とご子息たちのみです)。その場合は後援会が運用することとし、後援会名義のドメインを使うなどの選択がベターかもしれません。

まとめ

自分以外にはあまり需要がなさそうな内容だな…と思いつつ、歌舞伎俳優のドメインのゆくすえが気になって調べ始めたのですが、ドメインを取得した背景などに想像を巡らせたりすることもできて面白かったです。
(この記事のネタをつぶやいたときに「読んでみたい」と反応してくれた友人たち、ありがとう)

歌舞伎がある限り、襲名というビックイベントも続いていくと思いますので、今後も定期的に観察していきたいと思います。

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